電子機器、自動車、その他の電子技術の急速な発展に伴い、ワイヤーハーネスの市場需要は拡大を続けています。同時に、小型化・軽量化といった機能と品質に対する要求も高まっています。
ワイヤーハーネスの品質確保に必要な外観検査項目をご紹介します。さらに、新型4Kデジタルマイクロスコープシステムを活用し、拡大観察、測定、検出、定量評価、作業効率向上を実現する活用事例もご紹介します。

重要性と要件が同時に増大するワイヤーハーネス
ワイヤーハーネスはケーブルハーネスとも呼ばれ、電子機器を接続するために必要な複数の電気接続(電源、信号通信)配線を束ねて形成された部品です。複数の接点を一体化したコネクタを使用することで、接続を簡素化し、誤接続を防止することができます。自動車を例にとると、1台あたり500~1,500本のワイヤーハーネスが使用されており、これらのワイヤーハーネスは人間の血管や神経と同じような役割を果たします。ワイヤーハーネスに欠陥や損傷があると、製品の品質、性能、安全性に大きな影響を与えます。
近年、電気製品や電子機器は小型化・高密度化の傾向にあります。自動車分野では、EV(電気自動車)、HEV(ハイブリッド車)、誘導技術による運転支援機能、自動運転などの技術も急速に発展しています。このような背景から、ワイヤーハーネスの市場需要は拡大し続けています。製品の研究、開発、製造の面でも、多様化、小型化、軽量化、高機能化、高耐久性などの追求に入り、さまざまなニーズの新しい時代に対応するよう努めています。これらのニーズに応え、高品質の新製品や改良製品を迅速に提供するために、研究開発中の評価や製造工程での外観検査は、より高い精度とスピードの要件を満たす必要があります。
品質の鍵となる電線端子の接続と外観検査
ワイヤーハーネスの製造工程では、コネクタ、電線管、プロテクタ、電線クランプ、締め付けクランプなどの部品を組み立てる前に、ワイヤーハーネスの品質を決定づける重要な工程、つまり電線の端子接続を行う必要があります。端子接続には、「圧着(かしめ)」「圧接」「溶接」といった工程が用いられます。様々な接続方法を用いる場合、接続に異常があると、導通不良や芯線抜けなどの不具合につながる可能性があります。
ワイヤーハーネスの品質を検査する方法としては、「ワイヤーハーネスチェッカー(導通検査器)」を使用して、電気的な断線やショートなどの問題がないか検査するなど、さまざまな方法があります。
しかし、各種試験後や故障発生時の具体的な状態や原因を究明するためには、顕微鏡や顕微システムの拡大観察機能を用いて、端子接続部の外観検査・評価を行う必要があります。各種接続方法における外観検査項目は以下の通りです。
圧着(かしめ)の外観検査項目
各種端子の銅被覆導体の可塑性を利用して、ケーブルとシースを圧着します。生産ライン上の工具や自動化装置を用いて、銅被覆導体を曲げ、「かしめ」によって接続します。
【外観検査項目】
(1)芯線が突出している
(2)芯線突出長さ
(3)ベルマウスの量
(4)鞘突出長さ
(5)切断長さ
(6)-1は上向きに曲がる/(6)-2は下向きに曲がる
(7)回転
(8)振る

ヒント:圧着端子の圧着品質を判断する基準は「圧着高さ」です
端子圧着(かしめ)完了後、ケーブルとシースの圧着点における銅被覆導体部の高さが「圧着高さ」です。規定の圧着高さ通りに圧着しないと、導電性の低下やケーブルの抜けが発生する場合があります。

圧着高さが規定値より高いと「圧着不足」となり、張力によって電線が緩んでしまいます。一方、圧着高さが規定値より低いと「圧着過剰」となり、銅被覆導体が芯線を切断し、芯線を損傷する恐れがあります。
圧着高さは、シースと芯線の状態を推定するための基準に過ぎません。近年、ワイヤーハーネスの小型化や使用材料の多様化に伴い、圧着端子断面における芯線の状態を定量的に検出することは、圧着工程における様々な欠陥を総合的に検出する上で重要な技術となっています。
圧接の外観検査項目
被覆電線をスリットに差し込み、端子に接続します。電線を挿入すると、スリットに設置された刃が被覆に接触して貫通し、導通が確保されるため、被覆を剥がす必要がありません。
【外観検査項目】
(1)ワイヤーが長すぎる
(2)電線上部の隙間
(3)はんだ付けパッドの前後に突出する導体
(4)圧接中心オフセット
(5)外装の欠陥
(6)溶接シートの欠陥および変形
A: 外側のカバー
B: 溶接シート
C: ワイヤー

溶接外観検査項目
代表的な端子形状とケーブル配線方法は、「錫スロット型」と「丸穴型」に分けられます。前者は電線を端子に通すタイプ、後者はケーブルを穴に通すタイプです。
【外観検査項目】
(1)芯線が突出している
(2)はんだの導電性が悪い(加熱不足)
(3)はんだブリッジ(はんだ付け過多)

ワイヤーハーネスの外観検査・評価の応用事例
ワイヤーハーネスの小型化に伴い、拡大観察による外観検査・評価はますます困難になってきています。
キーエンスの超高精細4Kデジタル顕微鏡システムは、「高水準の拡大観察、外観検査・評価を実現しながら、作業効率を大幅に向上できます。」
フルフレームフォーカスによる立体物の深度合成
ワイヤーハーネスは立体物であるため、局所的にしか焦点を合わせることができないため、対象物全体を網羅した包括的な観察・評価を行うことが困難です。
4Kデジタルマイクロスコープシステム「VHXシリーズ」は、「ナビゲーションリアルタイム合成」機能を使用することで、自動的に深度合成を行い、対象物全体にフルフォーカスした超高精細4K映像を撮影できるため、正確かつ効率的な拡大観察や外観検査・評価が容易に行えます。

ワイヤーハーネスの反り測定
測定には顕微鏡だけでなく、様々な測定機器を使用する必要があり、測定プロセスは煩雑で時間と労力を要します。さらに、測定値をデータとして直接記録することができないため、作業効率や信頼性の面で課題が残ります。
4Kデジタルマイクロスコープシステム「VHXシリーズ」は、「二次元寸法測定」のための多彩なツールを搭載しています。ワイヤーハーネスの角度や圧着端子の断面圧着高さなど、様々なデータの測定を、簡単な操作で完了できます。「VHXシリーズ」を使用すれば、定量的な測定を実現するだけでなく、画像、数値、撮影条件などのデータを保存・管理できるため、作業効率を大幅に向上できます。データ保存後も、アルバムから過去の画像を選択し、異なる場所やプロジェクトでの追加測定作業を行うことができます。
4Kデジタル顕微鏡システム「VHXシリーズ」を用いたワイヤーハーネスの反り角度測定

「2D寸法測定」の多彩なツールを使用すれば、正しい角度をクリックするだけで簡単に定量測定を完了できます。
金属表面の光沢に影響されない芯線のかしめの観察
金属表面からの反射の影響を受け、観察できない場合があります。
4Kデジタルマイクロスコープシステム「VHXシリーズ」は、「ハロー除去」と「環状ハロー除去」機能を搭載しており、金属表面の光沢による反射干渉を除去し、芯線のかしめ状態を正確に観察・把握することができます。

ワイヤーハーネスのかしめ部分のズームショット
外観検査の際に、ワイヤーハーネスのかしめ部などの小さな立体物に正確にピントを合わせるのが難しいと感じたことはありませんか?小さな部品や微細な傷の観察は非常に困難です。
4Kデジタル顕微鏡システム「VHXシリーズ」は、電動レンズコンバーターと高解像度HRレンズを搭載し、20倍から6000倍まで自動で倍率変換できる「シームレスズーム」を実現。手元のマウスやコントローラーで簡単な操作を行うだけで、すぐにズーム観察を完了できます。

立体物の効率的な観察を実現する全方位観察システム
ワイヤーハーネスなどの立体製品の外観観察では、対象物の角度を変えて固定するという操作を繰り返す必要があり、角度ごとに個別にフォーカスを調整する必要があります。局所的にしかフォーカスできないだけでなく、固定も難しく、観察できない角度も存在します。
4Kデジタル顕微鏡システム「VHXシリーズ」は、「全周観察システム」と「高精度X・Y・Z電動ステージ」を活用することで、一部の顕微鏡では不可能なセンサーヘッドとステージの柔軟な動きに対応します。
調整装置により、視野軸、回転軸、傾斜軸の3軸調整が容易になり、様々な角度からの観察が可能になります。さらに、傾けたり回転させたりしても視野から外れることなく、観察対象を常に中心に維持します。これにより、立体物の外観観察の効率が大幅に向上します。

圧着端子の定量評価を可能にする3D形状解析
圧着端子の外観観察では、三次元の対象物に局所的に焦点を合わせる必要があるだけでなく、異常の見逃しや人による評価のずれといった問題があります。三次元の対象物については、二次元的な寸法測定によってのみ評価が可能です。
4Kデジタルマイクロスコープシステム「VHXシリーズ」は、鮮明な4K映像による拡大観察や2次元寸法測定だけでなく、3D形状の取得、3次元寸法測定、各断面の輪郭測定も可能です。3D形状の解析・測定は、ユーザーの熟練した操作を必要とせず、簡単な操作で完了します。圧着端子の外観の高度かつ定量的な評価と、作業効率の向上を同時に実現します。

かしめられたケーブル部分の自動測定
4Kデジタル顕微鏡システム「VHXシリーズ」は、多彩な計測ツールを搭載しており、撮影した断面画像から様々な自動計測を簡単に行うことができます。
例えば、下図のように、芯線圧着断面の芯線領域のみを自動測定することが可能です。これらの機能により、圧着高さ測定や断面観察だけでは把握できない、かしめ部の芯線状態を迅速かつ定量的に検出することが可能です。

市場のニーズに迅速に対応するための新しいツール
今後、ワイヤーハーネスの市場需要はますます高まっていくでしょう。高まる市場ニーズに応えるためには、迅速かつ正確な検出データに基づいた新たな研究開発、品質改善モデル、そして製造プロセスを確立する必要があります。
投稿日時: 2023年12月26日